カラマーゾフの兄弟2
昨日、父親であるフョードル・カラマーゾフを実際に殺害したのはカラマーゾフ家の料理人スメルジャコフだと書きましたが、このスメルジャコフというのが、なんとも魅力的というか、恐ろしいというか、醜悪というか、とにかく実際の生活では絶対知り合いになりたくない人間なのですが、しかし、いるんですよね、こういう人間…もしかしたら私の中にもスメルジャコフ的人間が住んでいて、ある日ある時…と思うと…おお、寒ッ!
既にお読みの方はもちろんご存知なわけだけれど、このスメルジャコフは父フョードル・カラマーゾフが、街を徘徊するのを常としていたリザヴェータ・スメルジャーシチャヤに孕ませた子どもではないか、という噂があるんですよね。それで母親は彼を産むとすぐに亡くなるんだけれど、カラマーゾフ家の使用人であるグリゴーリィ夫妻が彼を育てるわけなんですが、子どものころから、猫を縛り首にして葬式ごっこをしたりしていた、と書かれているんですよね。母親のリザヴェータは、たぶん知恵遅れというか、痴呆のような女だったのだと思いますが、産気づいた時に、柵を乗り越えてカラマーゾフ家の庭に侵入するんですよね。それで、グリゴーリィ夫妻が世話をすることになるんですがね。そのことも、フョードル父親説が流れる根拠になるわけなんですが…なんか、街を徘徊する痴呆の女に孕ませた子が大人になってその家に奉公していたり、父親の遺産をめぐってのやり取りなんかをよんでいると、瞬間、横溝正史の小説が脳裏をよぎるんですよ、「金田一さん!」という声とともに…
だから、たしかにロシアの小説なんだけれども、日本のちょっと昔に近いところがあって、そこも今回なんだか夢中になった原因の一つなんじゃないかなあ…
小説の最後近くで、このスメルジャコフとイワンの場面が三回出てくるんですが、イワンがどんどん追い込まれていくんですよねえ。いえね、思うだけなら誰だってあるじゃないですか、「あんなやつ、とっとといなくなればいいのに=とっとと死んじまえ!」って、心の中で叫ぶことくらい。それが、誰かによって実現されたとしたら、これは嬉しいというよりは怖いですよね。それも、あなたに確認したら、あなたはやれって言ったじゃないですか、と言われてしまったら…意識の領域から無意識の領域へというか、自分の無意識を覗き込んでいく感じになるんですよ、ここらあたりからイワンはね。そしてとうとう幻覚=自分の分身=悪魔を見るようになっていって、精神の病に陥っていくわけなんですが…
そして、スメルジャコフは自殺してしまうんですね。これは参りますよね。スメルジャコフはイワンの鏡だったのかもしれませんね。自分を見るために必要な鏡だった、自分の無意識をも見るための鏡だったとすれば、その鏡が自殺によって壊れてしまったのだとして、それでも自分をさらに見ようとすれば新たな鏡を作りだすよりほかなかったのかもしれないですね。その新たな鏡が幻覚症状なのかもしれません。
きょうはここまで。おやすみなさい。
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